絶体絶命都市4が終わったのでシナリオと全体のレビューします
前回「絶体絶命都市4が終わったのでシナリオ以外をレビューします」の続きです。
絶体絶命都市4のエンディングは全部見て、トロコンできた状態からのレビューです。ネタばれしますので予めご承知おき下さい。
こちらでも結論を先に書いてしまいますが、
「災害シミュレーターとしては優秀、ゲームとしては最低、シリーズファンとしては許容」
とします。操作やメニュー等のシステム周りは既に述べたので、次はメインやサブを含めたシナリオについて述べたいと思います。ただ弥生のイベント等、イベント個別の感想は触れません。そういった各イベントのトータルで全体のバランスが何かしらの基準に沿うならそれでいい、という風に考えています。
あらすじ
あらすじから。オフィシャルサイトからの引用です。
強烈な日差し、焼け付くアスファルト。
次々と自重に耐えられず倒壊していくビル群。地震発生直後の街は、危険に溢れ、人々は混乱している。
就職活動でこの街を訪れた直後に大地震に遭遇した主人公(男女から選択可能)は、土地勘もないまま、生き延びるために地震が続く都市をさまよう。
人々と協力したり、いがみ合いながら、情報を集め、崩壊都市からの脱出をはかる。
https://www.zettai-zetsumei.jp/lineup/
それと電撃オンラインの紹介記事はわかりいいですね。
電撃 – 『絶体絶命都市4 Plus』のゲーム概要が公開。災害シーン、生理現象、人間ドラマがよりリアルに描かれる
ただオフィシャルサイトで見つけられなかったストーリーがあるのはオフィシャルのニュースリリースだからなんでしょうかね。このあたりから既に詰めの甘さが透けています。
シナリオ自体の善し悪し
今作は災害シュミレーターである事と日数がある事で変な事になっています。
このゲームの目的は「被災した都市からの脱出」です。偶然訪れた街で被災した訳ですから、「危ない場所」から「可能な限りすぐ」脱出する事が目的になると思います。
実際、過去作はどこからどこへ脱出するのか、例えば「人工島から安全な場所への脱出」と明確にされていました。時間も「可能な限りすぐ」の脱出ですから具体的な日数はなかったと記憶しています。
今作はこの2つの点でどうしようもありません。ダメ、としか言いようがないし、フォローのしようも無いです。2が至高に思えます。
時間の扱い方
まずは作中の時間について。
今作は災害発生後の1週間、あちこちで様々な人間模様を目にするストーリーです。これは脱出優先だった過去作と異なっています。脱出が目的であれば可能な限りすぐ安全な場所へ移動したいはずです。
ですがこの主人公は災害シミュレーターの観察者として存在しています。だから脱出よりも物見遊山が目的となる様な行動ばかりで当事者感は全くなくなってしまいました。
例えば地震からベイサイド崩壊、その後マンション倒壊からの商店街全焼、と日数が進み場所が変わると急に色々起きます。今回の観察者は1人しかいません。だから異なる場所で起きる事を順番に見せる為に時間が必要になり、その結果の7日なのだろう、と考えています。
でもこういった出来事、本来は時系列でなく同時多発的に発生する物ではないのでしょうか。ザッピングシステムなら同時多発的な演出が出来たのでしょう。
もしくは選択肢や行動により行く場所が変わる(又は選べる)事で出会うイベントも変わる、となっていれば説得力はものすごく高くなっていたと思います。
また災害が起きた際、良く言われるのは72時間や3日という時間です。であればこの3日の間に被災エリアから脱出する、避難所に到着するといった形ならばこんな違和感のある展開にならなかったはずです。
ここまでの時点でやりたかった事よりも発売日が決まっていて、そこに間に合わせる為にはどうするか、という逆算から考えたとしか思えなくなっています。
場所の概念
次に場所の概念といいますか、今作の舞台の事がよく分かりません。
高層ビルがあり、大企業の本社がある位に栄えてて高速道路と地下鉄が走り、海が近くて住宅街もある。海からほど近くに駅があり、そこから歩ける範囲には別の大型ターミナル駅がある。横浜っぽく感じますが、とにかく海が近い大都市の様です。
歩いて行ける範囲に全部集まっている様ですが、街のつながりはよく分かりません。災害状況が各エリア毎に異なりすぎてその間をつなぐ様なエリアの描写もありません。何か起きた場所に連れて行かれているだけの様な感じがしました。
これはシミュレーションなら問題ないと思います。該当する場面を見せてくれている訳ですから。でもゲームなんですよね、コレ。
ならプレイヤーに対して統一感のある世界観を暗にでも見せて欲しいです。あまりに場面が細切れ過ぎたり、急に変わりすぎて一体どんな所をどんな風にさまよっているのかが全く分からなくなりました。
削られすぎたサブシナリオ
今作をプレイするとよく感じるのが、「ここからサブシナリオに分岐しそう」という感覚です。キャラクターの登場の仕方や集めるアイテム、台詞から行動によって過去作なら確実に分岐したであろう場面はかなりありました。
ただ今作では本当にサブシナリオがありません。異様な程ないです。
多分ベストラの株は買い占めたら乗っ取りできたのでしょう。ダニーに医者を呼んであげる世界もあったのかもしれません。熊沢と一緒に荒稼ぎする世界や、浩子が虐められない世界もあったのでしょう。
でもないんですよね、今回。
ここも発売日に間に合わせる為にはどうするか、という逆算もしくは間に合わないから削った、としか思えません。
そしてエンディング
観察者として街をさまようのが目的ですから、具体的にどう脱出できればゴールなのかなんて全く分からないわけです。だから今回の様なネタ的なエンディングしかなくなってるんです。
脱出するだけなら素直に歩いて脱出した、というエンディングもおかしくないんですよ。道は生きてるしがれき除去と周囲の安全性が担保されればいいだけですから。
それこそバスに乗って出て行く、でもいいでしょう。災害後に出会った人の家で同棲した、とか少し住まわせて貰った、でもありです。安全になった時点で脱出できればいいんですから。
今作は脱出ではなく観察が目的です。ですが脱出するための行動をある程度取ってしまっています。だから脱出はしないといけません。でも脱出する先も意思も大して無いからどうしようも無くなった。だからネタで作ったあのエンディングだけになってしまったのだと思います。
過去作でもああいったネタ的なエンディングはありましたから、元々作っていた物だとは思います。だけどストーリー的には脈絡がなさ過ぎる終わり方です。ここでも詰めるだけの時間が無かったんじゃないか、と思えています。
おわりに
正直内容は褒めようがなく、ひどい物です。当然納得は出来ません。
ですが好きなこのシリーズを7年越しに出してくれた事だけでも、内容がどんな物であれファンとして許容出来てしまうのです。本当に深く感謝しかありません。
だから追加で大量の有料DCLが出るにしても、完全版が出るにしても、ちゃんとしてくれるなら買います。
今回は復活の狼煙でしかないはずです。なので凄い出来の次回作が出てくれると信じています。
エリアとDLCが追加されたので「絶体絶命都市4の追加要素と後日譚の前後編が終わったのでレビューします」を追加しました。